この活用事例では、出願件数が年々増加している中国特許を対象に、独自のラベルを付与するラベリングする手順を解説します。
今回は、中国で出願されたパワー半導体に関する特許を対象に、デバイスプロセス関連の課題ラベルを付与します。
ステップ1:指示文の作成
査読種別の「ユーザー指示」を使用して、以下の指示文を入力します。
ステップ1:課題判定
特許文書の内容を注意深く読み、発明の核心的な目的と技術的アプローチを理解してください。
発明が以下の6つの分類のうち、どれに関連が深いか選択してください。
1. MOS界面品質
説明:SiCとゲート絶縁膜(SiO2)の界面に、Siデバイスよりも多くの欠陥(界面準位)が発生しやすい。これがチャネル移動度の低下や後述の信頼性問題の根源となる 。
2. ゲート酸化膜の長期信頼性
説明:ゲートにかかる高い電界により、酸化膜が時間とともに劣化し、最終的に破壊に至るリスク。TDDB(経時絶縁破壊)寿命の確保が重要 。
3. 閾値電圧の不安定性
説明:ゲート電圧の印加によって、デバイスのオン/オフを切り替える閾値電圧(Vth)が変動する現象。BTI(バイアス温度不安定性)とも呼ばれ、誤動作の原因となる 。
4. ドーピング・活性化
説明:SiCは不純物が拡散しにくいため、イオン注入が必須。注入時の結晶ダメージを抑制する高温注入や、注入した不純物を機能させるための1700℃以上の超高温アニールといった特殊な工程が必要 。
5. 堅牢性
説明:過電流・過電圧に対する耐性。特にアバランシェ耐量(UIS)や短絡耐量は、システムの保護設計と密接に関連する 。
6. その他
説明:上記1から5のいずれにも該当しないもの。
ステップ2:根拠
なぜその課題を選択したのか、根拠を説明してください。
ステップ2:出力形式を定義
「
出力形式を定義」を使用することで、生成AIの査読結果を項目毎に出力させることができます。
#1 小分類
ラベル:1. MOS界面品質、2. ゲート酸化膜の長期信頼性、3. 閾値電圧の不安定性、4. ドーピング・活性化、5. 堅牢性、6. その他
出力数:複数
付与ルール:
ステップ1:課題判定を出力してください。
複数該当する場合は、複数の課題を選択してください。
※ラベルを作成することで、生成AIは、作成されたラベルから選択して出力するように挙動します。ラベルを作成することで、出力の表記ゆれを可能な限り減らすことが可能です。
※「出力数」は、複数のラベルを付与させたい場合に選択します。また、付与ルールにも同様の旨を明記することが望ましいです。
ステップ3:査読対象の設定
今回は、中国特許を対象に、課題ラベル付与を行うため、査読対象は「明細書」を選択します。
日本特許が対象の場合には、「AIサマリー 課題(JP)」や「課題(JP)」を選択することで、処理テキスト量を減らすことができ、時間&コストの削減につながります。
ステップ4:AIモデルの設定
今回は、大量の文献を処理する必要があるため、コストパフォーマンスに優れた「gemini-2.5-flash」を選択しました。
また、推論過程の長さを「なし」にすることで、さらにコストをおさえ、処理速度の向上も期待できます。
推論過程は大きくなるほど、パフォーマンスの向上が期待できますが、推論時間とコストがかかります。
ステップ1-4で設定した内容で、査読設定を保存し、検索条件を設定して、査読を実行します。
ステップ5:査読結果の表示
パワー半導体の中国特許の検索母集団に対して、査読結果が表示されました。
生成AIは多言語理解に優れているため、中国の原文を対象として、日本語で出力されていることが分かります。
「出力形式を定義」を使用することで、査読結果が「小分類」と「判定根拠」に項目別で出力されていること分かります。
項目別に出力することで、エクセルで出力した際にも、各項目がセル毎に分かれて出力されるので、簡単に出力結果を加工できます。