技術や競合企業の動向解析

技術や競合企業の動向解析

Patentfield AIRの「新規分析設定(β版)」を使用して、SDIで収集した出願について発明課題ラベルを付与して、付与したラベルのうち、特定の企業に関する動向解析の手法について紹介をします。


Step1 出願リストの公報にラベルづけする

「新規分析設定(β版)」を利用して、SDIで収集した特許出願リストの各特許に「発明課題ラベル」を付与します。
「発明課題ラベル」は、人手で作成したラベルでもいいですが、「新規分析設定(β版)」のプリセットを利用して生成AIにラベルを作成させることもできます。
今回は、あらかじめ準備していたラベルを用いて各出願に「発明課題ラベル」を付与します。ラベル付与に用いた指示文は以下のとおりです。

ラベル付与の指示文は、各ラベルの定義や例を指示しておくと精度が向上する傾向にあります。
また、表形式で結果を出力する場合、指示文の中に列を指定しておくと後の分析が効率的です。例えば、公報番号、出願人、発明者といった列を含めておくのがおすすめです。

<指示文>

発明課題ラベルの作成した分類ラベルに従って、各出願に1つのラベルを付与してください。ラベルを付与した根拠を記載してください。根拠は、このリストをもとにエンジニアに納得できるように記載。ただし、150文字以内におさめること

また、指定したラベルに該当しない場合は、「その他」ラベルを付与し、ラベル付与する場合想定されるラベルを簡潔に記載すること

結果は、公報番号、出願年、出願人、発明者、ラベル、ラベル付与根拠の列を含む形式で出力すること。

1自動作業・施工精度向上

説明: 作業機械による掘削、積込、整地などの自動作業や施工において、その精度や品質、目標への追従性を高めることに関する課題。

例: 目標施工面への正確な追従、掘削形状の最適化、自動積込時の衝突回避、作業機の姿勢制御精度向上。

2走行・移動制御最適化

説明: 作業機械の走行や移動における安定性、効率性、快適性、および複数車両の連携に関する課題。

例: 無人車両の効率的な経路設定、走行中のショック低減、直進性の向上、特定の地形(崖など)における走行制御。

3安全性・異常時対応

説明: 作業機械の運用における事故防止、故障発生時の安全確保、および異常状態への適切な対処に関する課題。

例: 自然発車の抑制、故障時の最低限の稼働性維持、自動制動の適切な解除・復帰、操作レバー異常時の安全な制御。

4オペレータ支援・視認性向上

説明: オペレータの操作負担軽減、作業状況の視認性改善、および必要な情報の効果的な提供に関する課題。

例: 遠隔操作時の遠近感の改善、表示画面の視認性・操作性向上、運転室からの死角低減、オペレータの状態に応じた警報通知。

5現場環境認識・データ活用

説明: 作業現場の地形、障害物、作業対象などの環境情報を正確に認識し、それを作業計画や制御に活用することに関する課題。

例: 現況地形データの高精度作成、崖や障害物の自動認識、仮想壁の簡易設定、水中での作業機位置把握。

6作業効率・生産性向上

説明: 個々の作業(掘削、積込など)や作業サイクル全体の効率を高め、現場全体の生産性を向上させることに関する課題。

例: 掘削・積込サイクルタイムの短縮、積載量の最大化、作業負荷の軽減、マテリアル山の形状予測。

7動力・油圧システム最適化

説明: 作業機械の動力源(エンジン、電動機)や油圧システムの性能、効率、耐久性、および制御に関する課題。

例: 油圧式ブレーキのオーバーヒート抑制、電動機駆動への対応、油圧流量制御の最適化、走行駆動系の効率改善。

8機械構造・部品配置最適化

説明: 作業機械の物理的な構造、各部品の配置、およびそれによる機能性、メンテナンス性、耐久性、安全性に関する課題。

例: 冷却装置の小型化、アンテナやセンサの保護・盗難防止、キャブの脱着性向上、作業者の安全確保のための手すり配置。

9データ収集・管理・通信

説明: 作業機械から生成される各種データの効率的な収集、記憶、管理、および遠隔地との通信における課題。

例: 通信環境が悪い場所でのデータ損失防止、通信遅延による操作性の低下抑制、作業状態の正確な推定。

10システム較正・診断精度向上

説明: 作業機械に搭載されるセンサやシステム全体の計測精度、および異常診断の精度を高めることに関する課題。

例: 3次元センサやスイング角度センサの校正、車体座標系の高精度設定、旋回軸受の異常判定。

指示文での出力結果

Step2 ラベルづけされたデータから動向解析を行う

Step1の出力結果に対して追加指示をだし、特定ラベルを対象に指定した企業についての傾向を解析します。
今回は、さきほどの発明課題ラベルの中から「4オペレータ支援・視認性向上」について、コベルコ建機株式会社を対象に動向解析を行います。
動向解析を指示する指示文は、事実(動向)を表で整理させ、さらに考察(未来予測)を文章で記述させるという二段構えの指示を作成しています。
表で整理する事実(動向)では、出願年ごとの技術的な特徴、課題の特徴、そして過去の出願との差異を解析しています。
考察については、未来予測をレポートするようにしています。


<指示文>
「4オペレータ支援・視認性向上」についてコベルコ建機株式会社の特徴を以下の点で解析してください

・出願年ごとの出願の技術的特徴、課題の特徴

・過去年との差異

結果に基づき、今後、コベルコ建機株式会社が取り組む課題、技術の予測を提示してください。

予測の際、なぜそう予測するのかの根拠を明示してください。

この回答は表形式とテキストの組み合わせお願いします。

#表の出力

以下の表形式でまとめてください。

表は、出願年、技術的特徴、課題の特徴、過去年との差異の列を持つようにしてください。

#テキストの出力

各年の特徴と差異との情報から「4オペレータ支援・視認性向上」についてコベルコ建機が取り組む課題、技術の予測を提示してください。予測の際、なぜそう予測するのかの根拠を明示してください。

指示文での出力結果



以上のように、SDIなどで収集した特許出願から技術動向や未来予測について、生成AIに評価・コメントさせることができます。
ぜひ、手持ちのデータをつかって、関心のある企業や技術テーマで分析をお試しください。
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